■ホメオパシーの基本原則

ホメオパシーは、世界保健機関(WHO)が認めるように、現在世界の80ヵ国以上で用いられている補完・代替医療(CAM)です。特に欧州では、約30%のセルフケア利用率を含め、発祥国のドイツでは家庭医全体の75%がホメオパシー薬を処方しています。日本における漢方のような存在です。ホメオパシーは、本来体にに備わっているといわれる自己治癒過程に働きかけ、病気の人が全体のバランスを取り戻し回復していくと考えられています。疾患や病状よりも病気の人、その”人”に焦点をあて、オーダーメイドの個別性と多様性を特徴とする全人的(ホリスティック)な医療です。ホメオパシー(Homeopathy)という言葉は、ホメオパシーを体系化したドイツ人医師クリスチャン・サミュエル・ハーネマン(1755‐1843)がギリシャ語のhomoios(like, similar)とpathos(suffering)から造語して使われるようになりました。

ホメオパシーには、以下の二つの基本原則があります。

①similia similibus curentur (similia principle):類似の原則

医学の祖であるヒポクラテスの概念を引き継いでいます。ある物質(ホメオパシー薬)が健康な人に引き起こす症状と類似の症状を示している障害に対して、その物質が治療に使われるという原則です。身体の持つ自己治癒システムを刺激し、量的な反応ではなく質的な反応を引き起こし、回復をもたらすと考えられています。

②minimum effective dose:最小限で効果的な投与を行うこと

ホメオパシー薬を作る過程で、段階的な希釈(dilution)と振盪(sucussion)を行います。製造過程では単なる希釈だけでなく振盪を加えることで、多様なポテンシー(potency:効力)を持つことになります。


■ホメオパシー薬について

一般にレメディ(re:again+medeor:cure)と呼ばれ、現在では3000種類以上で約65%が植物から、その他動物や鉱物などから作られます。段階的な希釈を経て製造されますが、欧州や米国で認可されているホメオパシー薬の約70%がナノあるいは分子濃縮物となっています。超高度希釈されたホメオパシー薬は全製品の30%以下ですが、医療の現場では用いられています。現在では190以上の無作為対照試験や、多くの研究論文が報告されていますが、作用機序について未科学となっています。ホメオパシー薬は、欧州議会の指令によって管理され、医薬品として認可されています。ホメオパシー薬局およびGMP(Good Manufacturing Particle)の遵守やその国の医薬品に関する規制にも従っています。一方、認可されていない国では、その品質や安全性について課題も多く、WHOでも消費者保護のため2010年にホメオパシー薬の調製と取り扱いに関する安全指針を発表しました(World Health Organization : Safety issues in preoaration of homeopathic medicines)。


■ホメオパシーの利用について

ホメオパシーでは疾患が対象ではなく、病気の人に対し個別的に治療が行われます。主に慢性疾患では、現代医療が効果的ではない場合や現代医療における副作用、薬の投与量を軽減する目的で現代医療と統合的にホメオパシーを用いることが出来ます。


ホメオパシーの診療について

現代医療同様の過程に加え、二つの柱からなるホメオパシーのコンサルテーションが行われます。第一は病気の人を全体的に理解し、病気の人の全体像をひとつのパターンとして捉えること。第二に病気の人の全体像のパターンと、それに最も類似しているパターンを持つホメオパシー薬(最類似薬)を決定することです。


■ホメオパシーにおける副作用的反応

ホメオパシーでは、アグラベーションとプルービングには注意が必要です。アグラベーションとは”悪化”を意味し、通常、病気自体の悪化や、症状の悪化を言います。ホメオパシーでは、ホメオパシー薬を服用時に一時的な症状の悪化である”治療的アグラベーション”が慢性疾患に認められることがあります(頻度は10%以下)。これは自己治癒過程が始まった反応と考えられていますが、時に強い反応であったり長期化することもあります。”治療的アグラベーション”は、通常、ホメオパシー薬服用後1週間以内にみられ、多くは2週間以内に治まり、その後改善に向かいます。一方、プルービングは、現在の症状ではなく、病気と関係なく新しい症状が起こることで、ホメオパシー薬服用によってもたらされた反応です。このとき、その新しい症状は、服用したホメオパシー薬の作用と考えられています。頻度は非常に低いですが、プルービングはもともと健康な人にホメオパシー薬を投与して起こる反応や症状をみる検査ですが、治療を目的としてホメオパシー薬を服用した患者にも起こる可能性があります。病気に対する医学的な知識や臨床経験があってはじめて、治療的アグラベーションやブルーピングを、病気自体の悪化と識別することができます。ホメオパシーのレメディは安全であっても、それを用いる治療者によって安全でないものになる可能性があります。


■ホメオパシーにおける海外の状況と日本の状況

ホメオパシーは、ベルギー、フランス、オーストリア、ハンガリー、ロシア、イタリアなどのヨーロッパ諸国でさかんに利用されている他、キューバやメキシコなど中南米、インド、南アフリカなど世界で広く利用されています。ホメオパシーを行う治療者は、ベルギー、フランス、オーストリア、ハンガリー、ロシア、イタリアなど、法的規制のもとに医師のみが行う国と、英国など法的規制のない国や、ドイツのように独自の形態を取っている国があります。日本では、規制はまったくありません。レメディも医薬品の認可をされておらず、ホメオパシーを受診するにあたって、日本は安全な状況にあるとは言えません。日本でホメオパシーを広めようとしている団体はいくつか存在しますが、ホメオパシーセンターGENESISは、ホメオパシージャパンに所属し、ホメオパシーを日本に根づかせ普及させるために活動しています。